唐突SS

 何となく。
 小説書く、リハビリとも言います(笑)
 日常っぽいのを書くことからスタートしてみます。

 ウィンと音をたてて、パソコンが起動する。
 真っ暗な画面に映しだされる青を見ながら、少女は傍らに置いてあるマグカップを手に取る。
 一口飲もうと思ったが、思いのほか二口、三口と喉に運んでしまう。
 中身は100パーセントのオレンジジュース。
 好きな飲み物の中の一つだ。
 コクン、コクンと飲み続け、マグカップの中身はあっという間に空になる。
 あとに残った氷が、カチンと鳴り合うだけ。

 梅雨には似合わない晴天。
 開け放たれた窓から届く爽やかな風は、心地好い。
「……」
 完全にパソコンが立ち上がったのを確認して、少女はおもむろにネットを開く。
 白い画面に色とりどりの文字と画像。
 せわしなく動く様は、まるで人間のようだと思う。
 目的などはなく、何となく少女はネットを徘徊する。
 見る、というよりはこの言葉の方が似合っているような気がするのだ。
 きちんと目を通して映像を見ているはずなのに、記憶に残らないからだ。
 どこかに忘れてしまっているのか、意図的に置いてきているのか。
 そんなことは少女には分からなかった。
 とにかく、ネットという海を少女は徘徊する。
 今日も、昨日も、きっと明日も。
 
『ピコッ』

 音がして、小さなウィンドウが開く。
 メッセンジャーが、こちらを呼んだ音だった。

『おはよ。起きてる?』
 
『おはよう。起きてるからパソコン立ち上がってるんだと思うんだけど……』
 
 当然のことなのに、どうして聞いてくるのか。
 理解に苦しむ内容だったが、とりあえず返信をする。

『ま、そりゃそうだ。で、暇?』
『暇と言えば暇。』
 
 カタカタと音を立てて、キーボードを叩く。
 ピアノの音には負けるが、これはこれでいい音楽を奏でているような気がする。
 
『じゃあ、ちょっとゲーム付き合って。レベル上げ行きたいんだ。』
『了解。待ってて。飲み物用意するよ。』

 相手の要求は簡単なものだった。
 自分に叶えられる程度のもので良かったと、少女は内心胸をなでおろす。
 暇? と聞かれることはよくある。
 そういう時、大抵は何かして欲しい時なのだ。
 願いを言われても、叶えられないこともよくある。
 だから、少女は思う。
 叶えられる願いで良かったと。

 画面のスイッチだけを切って、少女は台所に向かう。
 前もって淹れておいた紅茶を出そうと、少女は冷蔵庫のドアに手をかける。
 開いた瞬間、冷蔵庫から出てくるひんやりとした空気に、時間を忘れそうな感覚をおぼえる。
 冷たくて、気持ちよかった。
 少し涼んでから、少女は紅茶を取り出す。
 しっかりと冷えたそれを手にすると、心地好さが体に広がっていく。
 そこでやっと少女は気がついた。
 自分の体が暑さで火照っていた事実に。
 おかしな自分、と少女は心の中で笑う。
 どうやら暑さで、頭がかなりヤラレテルらしい。
 少女は紅茶を冷蔵庫に戻すと、パソコンのある部屋まで戻った。

『ごめん、シャワー浴びてからにする』

 一言断りのメッセージを送って、少女は風呂場に向かった。
 風呂にでも入れば、きっと元の自分に戻れるだろう。
 そんな願いをこめながら、少女は脱衣所に入るのだった。