突然SS
薬はきちんと効く。
ベッドの上に転がりながら、少女はそんな当たり前のことを今更実感していた。
普段薬と言えば整腸剤くらいしか飲まない。
そのせいか、ゆるやかな変化こそ分かりはするが、速効性はあまり感じたことがなかった。
ドラッグストアで買ってきた箱の裏側には、カタカナが羅列する。
聞いたことがあるようでいて、意味は知らない単語たちがこちらを見ている。
風邪薬とうたっているだけあって、飲んで1時間。
諸症状は軽くなった。
先程まですすっていた鼻も、少しずつだが通りが良くなった気がする。
本当、今の世の中は便利になったものだと、多少もうろうとする意識の中で少女は思う。
「まりな! 明日出かけたいなら、電気消してもう寝なさい!」
階下から聞こえた母の怒鳴り声に、少女は気のない返事をする。
とりあえず薬箱を枕元に置き、電気を消す。
途端に部屋は本来の色を取り戻し、今が夜だということを教えてくれた。
そう。明日は大切な約束がある。
風邪で寝込んでいる場合じゃないのだ。
未来をたった二粒のカプセルに託し、まりなは瞳を閉じる。
明日は元気な自分に戻れるよう、祈りながら。